耽美なる箱庭





 起きると、千佳くんはいなかった。

 空っぽなベッドを陽光が照らしている。憂鬱な朝のはじまりに、ため息が溶け込んだ。う〜寂しい。

 それにしても、唇が乾燥してるような? ん?



「……ハッ! 千佳くんとキスしたのって夢!?」



 わあああああ!?!?

 唇を触り続けていれば、蘇る昨夜の痴態。

 寝惚けていたせいで朧気な記憶だけど、唇の柔らかさと舌の熱さを覚えていた。

 ひとりでは持て余す広いベッドに、ごろごろと転がって唸る。



「ううう〜〜〜!もっかい練習って言えば、またキスできたりするかな〜〜……」



 あわよくば、もう一回。

 淡い下心に包まれた叫びが、部屋に木霊した。


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