耽美なる箱庭
◇
起きると、千佳くんはいなかった。
空っぽなベッドを陽光が照らしている。憂鬱な朝のはじまりに、ため息が溶け込んだ。う〜寂しい。
それにしても、唇が乾燥してるような? ん?
「……ハッ! 千佳くんとキスしたのって夢!?」
わあああああ!?!?
唇を触り続けていれば、蘇る昨夜の痴態。
寝惚けていたせいで朧気な記憶だけど、唇の柔らかさと舌の熱さを覚えていた。
ひとりでは持て余す広いベッドに、ごろごろと転がって唸る。
「ううう〜〜〜!もっかい練習って言えば、またキスできたりするかな〜〜……」
あわよくば、もう一回。
淡い下心に包まれた叫びが、部屋に木霊した。