耽美なる箱庭
家の中に戻ると、丁寧に足に靴下を履かせられた。
それから、目敏くマグの中身と隈のある顔を見つめられて、大袈裟にため息をつかれる。
「……徹夜しただろ」
「ぎくっ」
朝帰りなのに、どうしてイケメン具合が霞んでいないんだろうな、なんて呑気に考えていれば、ジト目の千佳くんにチクチク叱られた。
「今から寝んのにカフェインなんか摂取してんな、バカタレが」
ぽすん、と頭を手の側面でチョップされる。
お互いさまなのに、と反論したいけど、千佳くんに口喧嘩では勝てないのを身をもって知ってるので、素直に悄げて「ごめんなさい」と謝った。
すると、わたしの身体をひょいっと持ち上げた千佳くんが「ご飯も食ってねーな」と声を低くして言う。
「た、たべたよ」
「なに食べたか言ってみ」
「……グミ」
「それはご飯じゃなくてお菓子」
「ごめんなさい」
美形が怒ってるのって、迫力あるよね。
わたしの自慢の幼なじみは、テレビに映る俳優やモデルと大差ないくらいかっこいい。
見慣れてても、ときどき見惚れてしまうのだ。
「朝ごはん作っから待ってろ」
優しい幼なじみの言葉に、わたしは従順に頷いた。