耽美なる箱庭


 わたしはぼろぼろにされた衣装を抱きしめて、部屋で大泣きした。学芸会も行かないと泣いて、閉じこもった。

 けど、部屋を小さくノックして「のの」と呼ぶ千佳くんの声には抗えず。

 泣きながらドアを少し開けると、千佳くんはするりと入り込んで、わたしを大事そうに抱きしめた。


「気づかなくてごめんな、のの」

「……ひっく、うっ、ちーくん、つくってくれたふくなのに……ぐすっ」


 いじわるをされたことよりも、悪口を言われたことよりも、千佳くんが時間をかけて作ってくれた衣装を壊されたことが悲しくて。

 わたしは、わんわん泣いて謝った。


「ののは何も悪くねぇよ。お前に嫉妬してこんなことしたんだ。学芸会なんて行かなくていい」

「……ぐすっ、しっと?」

「そう。俺の作った衣装がののに似合いすぎて、かわいかったから、悔しかったんだろ」

「くやしい?」


 小学生のわたしは、いまいち千佳くんの言うことが理解できなかったけど、涙を服の裾で吹かれながら思った。


「(ちーくんに、みてほしかったな)」


 ままとぱぱよりも、千佳くんに。

 衣装を着て、歌って踊る姿を、みせたかった。

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