耽美なる箱庭


 けっきょく、学芸会は行かなかった。

 代わりに、家の中で泗水家と藺月家に見守られながら主役の妖精を演じた。

 衣装は間に合わないから、羽だけ簡易的なものを千佳くんに作ってもらって、みんなに「かわいい」って褒めてもらった。


「かわいい〜、うちの子にほしいわ」

「息子に頑張ってもらおうな」

「あらあら、うちの乃々を貰ってくれるの?」

「えっ! ま、まだお嫁さんは早いよ! 乃々はぱぱと結婚するんだもんね〜?」

「ん? ちーくんがいい」

「ですって。お義父さん?」


 ふわり、わたしを膝の上に乗せる千佳くん。

 取り返そうとする少し気の弱いぱぱと、微笑ましそうに見つめるまま。

 千佳くんを応援してる由佳ちゃんと千里くん。

 悲しいこともあるけれど、わたしは毎日幸せで、こんな日々が続けばいいと思っていた。

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