耽美なる箱庭
中学1年生。
告白されることが多くなった。同級生、もしくは知らない先輩。あと本当に面識のない他校の人にまで。
千佳くんとぱぱの言いつけで「他に好きな人がいるので、ごめんなさい」と断り続け、ちょっぴりうんざりしていた頃──ある事件が起きてしまう。
〈千佳くん、学校に迎えに来てほしい〉
どんよりとした密雲が、空を停滞している。
ままとぱぱが地方に仕事で赴くことになって、わたしは数日藺月家にお世話になっていた。
その日は由佳ちゃんたちも仕事で、夜遅くまでわたしと千佳くんのふたりきり。
傘を忘れたわたしは、ちょうど千佳くんも大学の講義がおわる頃だろうと連絡をしたのだが、返信が来なくて。
仕方なく、小雨に切り替わった瞬間を見計らって走って帰ることにした。
だけど、雨脚がポツポツからザーザー。
「うわ〜……びしょ濡れ」
洪水のような雨の勢いに負け、わたしは使われてないビルの入口で、雨宿りをすることにした。
まだ夕方なのに、雨雲のせいで辺りが薄暗い。
濡れて変色したスカートの裾を絞り、水気を切りながら、わたしは学校で待ってるべきだったと思った。