耽美なる箱庭
偏食なわたしは、嫌いな食べ物がたくさんある。
お刺身、生の野菜、脂身の多い肉、辛いもの、苦いもの、ひとつずつあげたらキリがない。食べられるものを数えていったほうが、はやいくらいだ。
そんな偏食で、食事をとることも忘れがちなわたしの栄養管理をしてくれてるのが、千佳くん。
「千佳くん、なに作ってくれてるの?」
「ホットサンド」
「わたしが好きなやつだ」
キッチンに立つ広い背中にくっつけば、安心した。
高身長な千佳くんの顔が遠いから、代わりに器用な手先を視線で追いかけて、こっそり匂いを嗅ぐ。
「……火、危ねぇから背中くっつくな」
「距離あるよ」
「火傷するかもしれないだろ」
「絶対しない〜」
「んじゃ気が散るから離れろ」
も〜! いじわる!
頬を膨らませて見上げると、言葉では邪険にするくせに頭をぽんぽん撫でてくる千佳くんがいて、もどかしさに呻いた。
ぐりぐりと額を、千佳くんの背中に押しつける。
「なに、のの」
「朝帰ってくるって聞いてない。ばーか」
そしてそのままひとつ、不満をぶつけた。