耽美なる箱庭


 けど、千佳くんの言動に納得もしてしまう。

 だって、頼まれたのは仕事だ。引き受けたら、最後までやり遂げないといけない。投げ出すことは許されない。

 そんな状況で、人前が苦手な不確定要素のわたしを使うのは、経営者としてむりだと判断したんだろう。

 話をしてくれなかったのはショックだけど、非難はしたくない。


「多分、千佳くん、悪意があったわけじゃなくて」

《いや、ののちゃん人目に晒したくないからって、本人の意思も聞かないで独断で決めるのは、さすがにやりすぎ。自分勝手すぎる》

「そ、れは……。わたしは実際自立できてなくて、問題だらけで、不安だから……」

《自立させないで囲ってるの間違いでしょ》

「…………」

《モデルの件、ののちゃんが自分で考えて決めてほしい。無理強いはしないから》


 真剣な口調に、熱意を感じた。

 向き合ってくれてる人に、曖昧な返答をするのは失礼だ。わたしも本気で考えて、答えを出さないと。


「……すこし、考える時間ほしい」

《わかった。できれば二週間以内には返事がほしいかな》

「うん」


 よし、まずは自分で考えて、そのあと千佳くんと話し合いをしよう。

 風邪ひいてるし、熱も下げて──……







「────誰と話してんの、のの」



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