耽美なる箱庭


 上昇していく体温。脳を正常に働かない。

 考えなくていい、という言葉は起爆剤になった。


「わたし〝やらない〟なんて言ってない」


 ぱちん、と千佳くんの手を叩き落としたわたしは、朧気な視界で睨む。


「できないだろ」

「どうして千佳くんが決めつけるの!」


 冷静な千佳くんと、興奮してるわたしは対照的。

 でも、悔しかった。千佳くんの言ってることが正しいと理解しているけど、はなからなにもできないと決めつけられるのは、期待されてないのと同義。

 一歩、二歩、後ずさったわたしは、宣言する。


「モデル、やる」


 反抗心と悔しさ故だった。

 僅かに不愉快そうな顔をした千佳くんから、離れようと距離を置く。

 だけど、急に腕を掴まれたと思えば、そのままベッドに押し倒された。


「許すと思ってんの?」

「っ、許さなくていい、離してっ」

「俺がいないと、なんもできないだろ」

「〜〜っ、離してよっ」

「誰が離すか」


 ベッドに縫い付けられた腕が痛い。

 見下ろしてくる千佳くんを、キッと睨めば、暴れるわたしを封じ込めるようにキスをしてきた。

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