耽美なる箱庭



 玉響な沈黙が、部屋を満たす。

 わたしの腕を離して解放した千佳くんは、体勢を起こしてベッドに腰掛けると、項垂れたように目元を手で覆って隠した。


「……ちかくん?」


 きっと、熱が上がってる。

 あまり呂律も回らなくて、へこんでるような千佳くんの背中を指でトントンとノックした。

 反応は返ってこない。無視されている。


「わたし、おこってないよ」

「……悪かった」

「うん。麗くんにも謝ってあげてね」

「……」


 反省したのかな。

 顔をみたいけど、服を引っ張ってみても振り返ってはくれない。


「……俺にもう、触られたくないくらい、嫌いになったか?」


 え? 嫌い? なるわけない。

 どうして突然そんなことを言い出したのか、わたしは首を傾げた。

 俺とキスどっちがって聞かれて、どっちもいやって答えたから? 気にしてる?


「いやっていったの、うそだよ」

「……」

「ずっと好きだよ」


 どさくさに紛れて、自分の想いも零してしまう。

 千佳くんが、ぴくりと肩を揺らしたようにもみえたけど、小さく頷かれただけで言葉は返ってこなかった。

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