耽美なる箱庭



《──オレの勝ち》



 開口一番。妙に察しのいい腐れ縁の男が、腹立たしい言葉をぶつけてきた。

 舌打ちを返すも、麗は笑うだけ。殴りたい。



《どうせ、ののちゃんを人前に晒すのが嫌とか、自分以外が作った服を着せるのが嫌とか、幼稚な独占欲だろ?キモ〜》

「口調、前のに戻ってんぞ」

《お前の前だからどーでもいいし。ほんっと公私混同すんなよロリコン》



 温和な態度を脱ぎ捨てた麗が、火力高めで俺に毒づいてくる。言い返そうにも、今日は分が悪い。

 俺が、乃々を泣かせてしまった。



《────依存させて、悪いヤツ》



 長年の付き合いのせいで、俺の急所を知る麗に痛いところばかり的確にえぐられる。

 そうだ。麗の言う通り、俺は乃々に自分がいないとだめなことを、刷り込んでいる。俺の元から羽ばたかないように、この箱庭に閉じ込めた。



「乃々の写真やデータは、全部回収させてもらうからな」

《……はぁ〜〜、仕事が終わったら好きにすれば》



 機械越しに《変態が》と罵ってきた麗を無視し、通話を終了させる。

 口直しに乃々の元に行けば、風邪のせいかベッドの中で寒そうに震えていた。

 温めるだけ、と脳内で言い訳を並べながら、隣に寝て小さな身体を抱きしめる。



「俺も、ずっと好きだよ」



 もう少しで、ののも20歳だ。

 そしたら、全部、俺のものにしてしまおう。


 丸い額に口付けて、誰にも奪われないよう、俺は愛しい幼なじみを両腕に仕舞いこんだ。

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