耽美なる箱庭
「お、お久しぶりです……? 麗くん?」
「そ、麗くんだよ」
「おい、ののに抱きつくな。離れろ美麗」
「黙れ保護者ヅラ」
千佳くんにべりっと剥がされた麗くんは、わたしの記憶にある姿とかなり違う。
昔も今も綺麗な顔立ちなのは変わらないけど、なんか蠱惑的で色気がむんむんだ。メイクしてるからかな?
「(イメチェンって、こういうこと?)」
装いが、そこはかとなく中性的。
ホワイトピンクに染められたロングウルフのヘアーに、ガーネットの色の瞳。切れ長の目元に、細く通った鼻筋と薄い唇。パーツ自体は、変わってない。
昔は派手でヤンチャにみえたけど、今は妖しさと柔和な空気を共存させている。
「驚いてる? それとも見惚れてる?」
「どっちも……」
「ののちゃんは、相変わらず小動物みたいにびくびくしててかわいいね〜」
でた、麗くんの〝かわいい〟だ。
ゆるりと口角を持ち上げた麗くんは、そのまま色のついた指先で、わたしのフードを取った。
それから、視界が明るくなったわたしを見て、素で驚いたように目を丸くする。
「……美少女の破壊力、えっぐ」
ぽつり、呟いた麗くんに千佳くんが舌打ちした。