耽美なる箱庭
一緒に仕事してるくらい仲良しなのに、どうして睨み合ってるんだろう。
わたしは、なんとなく、麗くんの顔と千佳くんの顔を見比べてみた。
「(系統の違う、美人がふたり……)」
麗くんは洗練された迫力あるけど、千佳くんは厳かで凛としている。
ノーセットの黒髪は艶があり、冷たいつり目で一見近寄り難いけど、全てのパーツが均整の取れた配置。無表情だと、やや朴念仁っぽい印象だ。
わたしは、やっぱり千佳くんの顔が好みかな。
「ののちゃん、準備はいい?」
「へ?」
顔に意識を向けすぎていて、反応が遅れた。
首を傾けると「スタジオにもう人集まってるから」と言われ、緊張から喉が渇く。
でも、こくんと頷いて背筋を伸ばした。
「のの、手繋ぐか?」
「だいじょうぶ。挨拶は大事だから」
「……無理になったら言えよ」
むりでも頑張る。変わるって決めたんだもん。
麗くんと千佳くんの背中を追い、アンティーク調の家具が置かれたスタジオに、足を踏み入れた。
泗水 乃々! いざ参る!
「き、今日は、よ、よろしくお願いします……!」
ガバリ、深くお辞儀してご挨拶。
声は震えたけど、頭を下げたおかげで誰の顔もみえなかったから、なんとか第一関門を突破できた。