耽美なる箱庭
────「ごめん、千佳」
少し席を外しただけだった。
誰がこんなことになると予想できただろうか。悪意があったわけじゃない。運が悪くて、災難に見舞われただけだ。責めるつもりはない。
「帰る」
感情を押し殺して、一言告げた。
冷静さを欠いてる自覚があったからだ。
怯えて泣く乃々を見たとき、心臓を引きちぎられるような痛みに襲われた。八つ当たりで詰ってしまいたくなるほどに、どうしてこんな目に遭わせたと。
呼び出してきた女も、記事を見せた男も、悪意がないとわかっていても、腹が立つ。
「ごめんな」
力を込めたら、折れてしまうくらい華奢な身体。
やっぱり、大切なものは鍵をかけて仕舞っておかないと駄目だな。
真夜中の箱庭で、俺は決意を固めた。