耽美なる箱庭
04:両想いミッドナイト
── 「乃々、好きだよ」
ああ。これは逆夢だね。
恋人のように寄り添う千佳くんが、夢の中のわたしに愛を唱えて、身体を深くまで密着させている。現実ではありえない光景だ。
過去の記憶を都合よく改竄するとか、わたしも大概性格悪く執着してる。
「(ぜんぶ、奪ってくれていいのに)」
画角外にいる現実が、呟いた。
千佳くんへの恋心を自覚したとき、好きな人を聞いたとき、もしかしてわたしを好きだったりしない?なんて淡い期待を抱いたこともある。
だって、わたしがいちばん優しくされて、甘やかされて、優先されてきたから。
けど、そんなのは脆く儚い希望だった。
── 「子どものお前には、手を出さないよ」
いつかの台詞が、リフレインされる。
わたしが、ほろ酔いの千佳くんに、下心で迫ったときに言われた台詞だ。
「(そっか。千佳くんにとっては、わたしはいつまでも、ただの子どもなんだなぁ……)」
ねえ、子どもと大人の境目ってなに?
どうしたら、わたしたちは、幼なじみの枠を越えられるんだろうね──?
◇