耽美なる箱庭
目が覚めると、見慣れたベッドの上で、千佳くんの懐に顔をすっぽりと埋めていた。
「……?」
なにが、起きたんだっけ。
寝起きで思考力が落ちている。千佳くんの麗しい寝顔を鑑賞しつつ、どうやって家に帰ってきて、なぜ寝てるのかを、必死に思い出そうとした。
でも、記憶はあっさりと戻ってきて、メンタルブレイクなわたしを蝕む。
「(……たくさん、被害者がいたんだ……)」
あのとき、わたしが被害届出してれば、もっとはやく捕まったのかな。
「ちかくん」
名前を呼べば、瞼を閉じてる千佳くんが、まるで条件反射のようにわたしの頭をよしよしと撫でてきた。
夢の中でも、弱虫なわたしを慰めてくれてるいるのだろうか。
奇しくも、最悪な過去とバッティングしたせいで、最後の最後で楽しい打ち上げが台無しになったことに更に落ち込んでしまう。
犯人の男以外、誰も悪くないのに。
「……ん、のの……?」
微睡みから目覚めた千佳くんが、掠れた声でわたしの名前を呼ぶ。
ちいさく「はあい」と返事をすると、より強く抱きしめられて、千佳くんの鼓動を近くで感じた。