耽美なる箱庭
あれ、予想していた反応とちがう……。
口を横にきつく結んだ千佳くんは、わたしの格好をまじまじと観察して、あろうことかブラジャーのホックを外そうと手を伸ばしてきた。
「なっ、ちかくんっ」
「……お前さ、わかってる?」
「え、なにがっ」
詰問するような千佳くんに、たじろぐ。
喜ぶと思ったんだけど、どこで間違えたんだろう?
眉をひそめている顔に「ごめんなさい?」と意味もわからず謝れば、呆れたようなため息をされ、ベッドに押し倒されてしまった。
うわあ、怒ってる顔もかっこいい……!
「あと数分も経てば、お前を抱くんだけど」
「……う、うん?」
「なんで他の男から贈られたもの着てんの?」
「(あ、やきもち?)」
正面にある愛おしい顔は、どこか拗ねている。
艶やかな黒髪が垂れ落ちて、悋気な瞳はわたしを真っ直ぐに捉えていた。
千佳くんは、ブラジャーの肩紐を指先でくいっと持ち上げて「で?」と圧をかけてくる。
「ランジェリー姿、かわいくない?」
「かわいいけど」
「ほめてくれてもいいよ」
「ののが世界で一番可愛いよ」
「ありがとう」
「でも俺がデザインしたやつ着せたかった」
「それはごめんね」
「ん」
「脱がせてくれる?」
「……ん」
チクタク。
時計の針が、12と書かれた数字の横に並んだ。