耽美なる箱庭
番外編

01:類は友を呼ぶ



〔 麗 side 〕



 俺の友人、藺月千佳は初対面から異質だった。



──「おはよう、藺月くん!」



 秋波を送る女子生徒の挨拶に、千佳は虫ケラをみるような双眸で、平坦に「うん」と一言だけ返す。

 これは、入学当初から飽きずに行われている肉食系女子の千佳攻略だ。靡かないとわかってるのに、めげずにアタックする精神力は讃えてあげたいね。



「おはよ、クール系王子様」

「……」



 挨拶ついでに、丸い後頭部にチョップすれば、無言で冷たい視線を向けられた。

 窓の外に顔を背けて、千佳は頬杖をつく。

 女を食ってそうな持て囃される容姿とは裏腹に、この男は誰にも心開かず、平等なまでに無関心を貫いているから面白い。

 見目も良く、成績も良く、スポーツも万能。

 しかし、優秀なくせに熱量がない。



「(仲良くなれそ)」



 俺と千佳の席は前後だ。

 話す機会はいくらでもある。俺は、態度を崩さないドライな男が、本気になる瞬間を間近でみてみたい。

 頬を持ち上げ、授業が終わるまで後ろの席のやつと同じように外の景色を眺めて過ごした。

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