耽美なる箱庭


 放課後の生徒会室。

 登下校している生徒を見下ろす生徒会長の視線を辿ると、千佳が歩いていた。



「せーんぱい、千佳狙ってんの?」

「そうよ。個人的にも生徒会にもほしいもの」

「いやいや、むりでしょ」

「まだわからないじゃない。年上好きかもしれない」

「ははっ、ねーわ」



 乾いた笑い声を零せば、不機嫌そうに「なんで無理だと思うのよ」と言葉が返ってくる。

 馬鹿だね、この女も。

 半年観察して気づいたけど、千佳は既にもう他の誰かのものだ。スマホを眺めているとき、窓の外を眺めて耽っているとき、確実にその人を思い出している。



「千佳に色仕掛けしたとこで無駄だよ」

「貴方は引っかかったわ」

「そりゃあ、健全な中学生男子だからね」



 品行方正を貫いているはずの生徒会長が、シャツをはだけさせて足を組んだ。

 半年前までランドセル背負ってた男に、よく手を出したよこの女も。それなりに性欲を発散したい俺からしてみれば、ラッキーでしかないけど。

 あんた、別にそこまで魅力的じゃない。



「麗は、ヤレれば誰とでもいいの?」

「それは流石に。好みはある」

「なら、私のどこを気に入ったわけ?」

「……目の形かな」



 ま、良いのはそれと遊び慣れてることくらいだ。

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