耽美なる箱庭


 中学2年。緑が鮮やかな皐月。

 あの生徒会室での事件以降、俺と千佳は言葉を躱す機会が多くなり、進級してもクラスは変わらず、自然とつるむようになった。


「ん〜……次の授業なに?」

「現文」

「うわ、絶対眠くなる」


 静かに昼食をとるために見つけたスペース。

 俺たちは階段の踊り場で横並びになりながら、持参のパンを齧る。

 すると、唐突に。


「変な拗らせ方してるよな、お前」


 拗らせ代表が、なんかほざいてきた。

 焼きそばパンを片手に視線を向ければ、言及してきたはずの本人が「あ?」と母音で威嚇してくる。

 いや、発端はお前なんだけど?


「拗らせってか、こだわり」

「……類は友を呼ぶ、とか言ってほしいわけ?」

「は?」

「んまあ、こだわりはあるけども」


 あるものへの、こだわり。

 ──俺は、美しいものに執着がある。

 それは、なんでもいい。人でも物でも、概念でも。俺は、自分の理想の美と出会うために生きている。

 だから、遊ぶ相手は、どこか自分のお気に入りの部位がないと無理。


「圧倒的な美しさを前に、俺はひれ伏したいの」


 生きて、死ぬまで、一生。

 美を求める美学に囚われる運命だ。


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