耽美なる箱庭


 俺が千佳と友人関係を築けると思ったのは、容姿の美しさも当然あるが、誰かに執着して拗らせていることが大きな理由だったりもする。

 愛を貫くのも、また美のひとつ。


「千佳ってさ、見た目は無口な魔王だし性根が腐ってるけど、考えがブレないのいいよ」

「喧嘩なら買う」

「褒めてんだって。俺、お前のやる店でデザイナーやりたいし」

「……」


 パンを咀嚼していた千佳が、俺の発言に少しだけ驚いたように目を見開いた。

 けれど、数回瞬きしてるうちに、もう真顔。

 俺の将来の夢は、千佳には話していた。刺繍もデザインも好きで、究極の美しさを、自分の作った服でより最高に完璧に仕上げてたいのだと。


「店やるとか、言ってないけど」

「服作ってるのに?」

「……」

「んな睨まれても。お前の親は有名だし、服作れるのは予想つく。けど誰かのためにデザインとかしなさそうだから、店かなって」

「……はぁ」

「つーことで、雇ってね」


 どうぞ、腐れ縁として末永くよろしく。

 未来を見越して挨拶した俺に、千佳は肩を竦めてため息を零した。

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