耽美なる箱庭


 季節は巡り、まさかの高校も千佳と同じ。

 ここでようやく、俺は千佳の幼なじみ、泗水乃々と出会うわけだが──……


「だ、だあれ? ちーくんの友だち? えっと、こんにちは……」

「のの、こいつに挨拶はいらない」

「(は? え? は? なにこれ? なにこれ!? ありえない可愛いすぎる……ハアア〜〜〜!?!?)」


 四散するかと思った。愛らしさの塊でしかない。

 千佳の後ろに隠れて、巣穴からひょっこりと顔を出すみたいに俺の方を窺ってくるから、あまりの可愛さに悶絶した。

 あっぶね。涎垂れそう。

 目の前にいる男は激重ロリコン大魔王だから、迂闊な真似したら殺される。


「幼なじみ? へぇ、かっわい」


 今までなんで会わせなかった!? という理不尽な怒りに苛まれつつも、俺は平静を努めて笑みを浮かべた。


「俺、麗って言うの。麗くんね」

「れいくん?」

「……〜〜っ、そうそう」


 小学3年生にして、完成されすぎている。

 完璧に調和されている骨格、絹のような淡い髪、吸い込まれるような二重の瞳、主張が激しくない鼻筋、雪肌を染める薄桃色の頬と唇。

 リアル天女。跪いて拝みたい。


「れいくんは、ちーくんの友だち?」

「のの、麗の名前呼ぶな」

「黙れロリコン」

「えっとえっと……あの……」

「警戒しないで、千佳の親友だから仲良くしてよ」

「あのね、わたし、泗水乃々です!」

「よろしく、ののちゃん」


 あーあ、見つけた。

 この子が、俺が求めていたものかも。

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