耽美なる箱庭


 どの角度が眺めても、可愛くて見飽きない。

 表情、仕草、喋り方。全てが可愛い。俺の見た目が派手だったから警戒はされたけど、甘いお菓子を与えたら懐いてくれたし、性格もドストライク。


「かわいい」

「ののに手出したら、樹海で自殺させる」

「うぜぇ〜」


 話してるだけなのに、千佳がうざすぎる。

 膝に乗せようものなら殺意を滲ませた目で睨んでくるし、あからさまな牽制がだるすぎだ。


「帰れ」


 まだ会って1時間やそこら。

 それなのに、千佳は限界が来たらしい。俺を自宅から強引に追い出した。

 は〜、これだから恋に盲目な男は面倒。


「れいくん、またね。バイバイっ」

「かわいすぎ……ののちゃんまたね……」


 心臓が痛い。可愛いすぎてしんどい。今すぐに服をデザインしたい。

 また会えるだろうと高を括っていた俺は、ドアの隙間から小さく手を振るののちゃんに悩殺されながら、帰路に着いた。

 ガリガリガリ。

 帰宅後、即スケッチブックに鉛筆を走らせる。


「(また、会えるかな)」


 無限にイメージが湧いた。夢見心地だ。

 この時の俺は、彼女と再会できる日までかなりの月日がいるとは露程も思わず、幸せな気分だった。

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