耽美なる箱庭
時間は、残酷に進んでいく。
千佳と大学は別々で、俺は本格的に服飾の道へ。
何度も季節が巡ったが、学生の内に俺とののちゃんと再会することはなかった。不幸が重なって人間不信に陥ったとは聞いたけど、詳しくは知れず。
千佳も怪我をしたり、精神面が危うくて、本当だった時期があったりもした。
そんな中、俺の意識にも変化が起きた。
──「美麗って呼んで」
美を求めるなら、自分も美しくありたい。
見た目に無頓着だったというわけじゃないけど、改めて〝美〟を見直した。
俺に、一番似合うスタイルはなんだろう。
髪色を変えて、話し方も柔らかくして、妖しさも込めて、顔のパーツに合うように、全体的に均整をとる。
名前を〝美麗〟と呼ばせるようになったのは、今の自分にそっちの方が合っていたから。それだけのこと。
撮影当日、再会した日。
数年ぶりに会ったののちゃんは、想像を遥かに超えて美少女だった。可愛すぎて発光していた。
一目で人を虜にする魅力があった。
──「(表現者だ)」
カメラの前で、スイッチを切り替えた瞬間。
俺は、圧倒的な美しさの前に、丸ごと思考を奪われてひれ伏した。やっぱり、彼女じゃないと駄目だった。
だから、本当に心から感謝していて。
あんな、怖い思いをさせたいわけじゃなかった。