耽美なる箱庭





 ──年が、越えた。

 溶けてなくなる雪が、空から舞い落ちる。

 もう会えない可能性が高いあの子に向けて、俺は手紙をしたためた。

 書き終えたタイミングで家のチャイムが鳴り、鍵を解錠すれば、正月明け&思いが結ばれて上機嫌の千佳がいて、ずかずかと室内に入ってくる。

 無言で、きな粉餅を渡された。


「なに? 餅のお裾分け?」

「ああ。あと幸せ」

「きもうざ今すぐ帰れ」

「……」


 初恋が成就した男の浮かれっぷり。見てられな。

 追い返したいのに、平然とソファーで寛ぎ始めたから仕方なく、きな粉餅のお供にお茶を入れる。きな粉餅に罪はない。


「……これ、既製品?」

「手づくり。ほとんど俺が作ったけど、ののが麗にも渡せって言うから……」

「なるほどね」


 恋人に言われ、渋々渡しにきたってことか。ののちゃんパワーすごいな。

 千佳の前に湯呑みを置き、俺は手作りにしてはクオリティが高いきな粉餅を一口で頬張った。うま。

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