まよいぼしカフェ
30分程して、香月さんが戻って来た。
「本当に申し訳ありません。お客様にあのような頼みごとを……」
「いえいえっ。電話の方は大丈夫でしたか?」
「はい。仕事の件は……学生さんの前で書道パフォーマンスをするはずの方が出来なくなり、俺に出来ないかと話がまわってきたしだいで」
「あ!見たことあります!うちの高校も書道パフォーマンスしてもらってました」
だが、香月さんはあまり浮かない顔だ。
それに気づいて、常連さんのひとりが香月さんに問いかけた。
「なんだ薫ちゃん、引き受けなかったのかい?」
「一応……引き受けはしたんですけど」
「だったら頑張りなさいな」
「わしも見に行けんのか?」
「美羽ちゃんみたいに、若返らないと無理でしょうよ」
あははっ――常連さんたちの楽しそうな会話が響くが、わたしは香月さんのどこか煮え切らない感じがどうも気になった。