まよいぼしカフェ





──カラン。




聞き慣れた鈴の音が耳に届くのと同時に、








「いらっしゃいませ」





微笑んでくれる……香月さん。





「こんにちはっ」




直したはずの髪を触りながら、カウンターへ座る。




「予定の時間より早かったですね。……もしかして走りました?」




「えっ……あ、まぁ……ちょっとだけ。って何で分かるんですか?」



着いてすぐ、走ったことを見破られ、

どこか変なところでもあるのだろうか……顔をペタペタと触ってみると、香月さんはクスリと笑った。





「当てずっぽうですよっ」



「……え」




そうなの?というリアクションを返せば、




「常連さんたちのお約束があるから、でしょう?」



と香月さんは手際よく作ったアイスコーヒーをカウンター越しではなく、こちらに回り込んで運びに来た。




「……その、それもあるんですけど……」




口ごもるわたしの前に置かれたアイスコーヒーに、頭を下げる。





「ありがとうございま──」









「……俺に会いたくて?」








──え……





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