まよいぼしカフェ
「はぁ……」
常連さんたちが帰り、閉店の時間が迫ってきた。
香月さんはグラスを磨きながら、大きく息を吐いたのをわたしは苦笑いして見つめる。
常連さんたちが来たのに気付かず、わたしと話していたことをまだ恥ずかしく感じているのかもしれない。
わたしも思い出すと恥ずかしくなるけど……
「……香月さん、わたしそろそろ帰りますね」
「あ、待って。車で送ってくから」
「え?大丈夫ですよっ。着いたら連絡しますから」
気を遣わせまいと、わたしは鞄を手にドアの方へ歩いていけば、香月さんに止められてしまった。
「待って。夏と違ってもう日が短いんだから、こんな時間に一人で帰せない」
「でも……」
「暗い道でどこぞの輩に絡まれたりしないか、心配で気が気じゃないの、俺。後五分だけ待ってて」
カフェのエプロンを外しながら急いで準備しだす香月さんに、わたしは甘えることに。
「……はいっ、待ってます」