不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人になりました
ラインハルトは二度、三度と瞬くと視線を地に落とした。

「それは……即答できないな」

ようやく得たい回答を得られた気がした。仮に恋人がいるのなら、余計にこんな婚姻は避けたいのが本音なはずだ。

「やっぱり考え直したほうが――」
「だが……君が明確な回答を要求するなら、協力が必要だ」
「は? 協力?」
「ああ、これから定期的に共に過ごす時間が欲しい」

冗談じゃない! と叫びそうになる言葉を必死に飲み込むと、頭がグラグラし目眩がした。
クレール家の人間と時間を共に過ごすなど……ありえない。
でも、とジェニファーは思い直す。
ラインハルトとの結婚はすでに決定事項だと言い渡されているので、彼に愛する女性がいようがいまいがそれは覆らないだろう。
それに結婚すれば嫌でも毎日のように顔を合わせるのだ、いまのうち少しでも慣れておくほうが良いのかもしれない。

(全く本意ではないけれど……)
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