不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人になりました
「……分かりました。協力とは具体的に何をすればいいのですか?」
「そうだな……手始めに今日のランチを共にするのはどうだろう?」
「……ランチ、ですか」
「不満そうだな、明確な回答を要求したのは君のほうじゃないか」
「う……わかりました。協力期間はあなたの答えが見つかるまで、でいいですね?」
「ああ」
「互いのためにも早いところ見つけてください」
「……善処する」
「婚約のことは……学園ではまだ内密でいいですよね?」

婚約式もまだなので、今すぐ公表する必要はないはずとジェニファーは考えた。
もっとも婚約式での宣誓が済んでしまえば公式文書に記録され、新聞で広く告知されるので隠すことはできなくなるのだが。

「何故だ?」

なのにラインハルトは心底不思議そうに首を傾げた。その様子にジェニファーのほうが面食らう。

「何故って、だってまだ婚約式も――」
「それなら今週末に、と話が進んでいる」
「なっ……!」

ジェニファーの知らないうちに恐るべき速さで話が進んでいた――その事実に愕然とする。
今すぐ父と伯母を問いただしたいところだが、無情にも馬車は屋敷から遠ざかってゆく。
そんなジェニファーを見てラインハルトは皮肉気に片眉を吊り上げた。
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