不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
ジェニファーの問いに答えぬまま、カヤはポケットから小瓶を取り出すと、中身をジェニファーに向かって振りまいた。
粉末状のなにかがジェニファーの全身に降り注ぎ、再び馬車のような強烈な睡魔に襲われた。
「あ、なに……を……?」
「最後にひとつだけ教えて差し上げましょう。憎いラインハルト様から最愛の者を奪う――それが私の心からの望みです。恨むなら、あなたを愛したラインハルト様を恨んでください。さようなら、ジェニファー様」
カヤはランプを持ち上げると、足元に出来ていた水溜りに火を落とした。
ボッと火の手が勢いよく上がるのと、カヤが身を翻すのはほぼ同時だった。
水の音だと思っていたが、どうやら油の類のようだ。
カヤははじめからジェニファーを焼き殺すつもりだったのか。
己の母の最期と同じように――
粉末状のなにかがジェニファーの全身に降り注ぎ、再び馬車のような強烈な睡魔に襲われた。
「あ、なに……を……?」
「最後にひとつだけ教えて差し上げましょう。憎いラインハルト様から最愛の者を奪う――それが私の心からの望みです。恨むなら、あなたを愛したラインハルト様を恨んでください。さようなら、ジェニファー様」
カヤはランプを持ち上げると、足元に出来ていた水溜りに火を落とした。
ボッと火の手が勢いよく上がるのと、カヤが身を翻すのはほぼ同時だった。
水の音だと思っていたが、どうやら油の類のようだ。
カヤははじめからジェニファーを焼き殺すつもりだったのか。
己の母の最期と同じように――