不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人になりました
学園に着くと、ラインハルトは教室まで送ると言って半ば強引についてきた。
本音は一刻も早く側から離れたかったが、協力の件もあってジェニファーは渋々了承する。
険悪で有名な二人が揃って登場したのだ、確実に噂は広まるだろう。
令嬢達になんて言おうか……考えただけで気分は重くなる。

「ジェニファー・ゼメルザ、昼に迎えにくる」
「待ってください、待ち合わせにしませんか? 裏庭の四阿(ガゼボ)など如何でしょう」
「ああ、あそこは静かでいいな。俺は食堂で何か適当に見繕って行こう」
「ありがとうございます」

裏庭なら人目にもつかないし、食堂で目立つより遥かにマシなはずだ。
もはや手遅れでも、あまりラインハルトと一緒にいるところを人に見られたくはない。

「ラインハルト・クレール、あなたも授業があるのですからここまでで結構ですよ」
「そうか」

ジェニファーは教室の手前でいったん立ち止まる。
そしてラインハルトを見送ろうとしているのだが、どうしたわけか彼は一向に立ち去らない。
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