不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
歳の頃は今の自分と同じ十七、八歳ほどに見える。
お嬢様と呼ばれていたからまだ結婚前なのだろう。
これは祖母の過去、ということだろうか。
見慣れぬ部屋をキョロキョロと見回していると、祖母――ミシェルの侍女らしき二人の女性がやってきて、頭や体をもふもふと撫でられた。

「ルナ、お嬢様がいなくて不安なのね。大丈夫よ、すぐに戻られるから」
「すぐに済むような話じゃないでしょう」
「きっとメリのことよね……メリったらどうしてあんなこと……」
「理由はどうあれ主人の婚約者を誘惑するなんて普通なら死罪よ。バカな女……」
「そんな……!」

ジェニファーを前に興奮気味に口論を始める二人。
話の内容から察するに、メリとはミシェルの侍女なのだろう。
そのメリがミシェルの婚約者……つまりジェニファーの祖父を誘惑した、という話に聞こえるけれど、祖父は祖母にべた惚れだったと皆が言っていた。
では、いったいこれはどういう状況なのだろう……うんうんと頭を悩ませていたところ、侍女のさらなる言葉にジェニファーは頭を殴られたような衝撃を受けた。
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