不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
「メリは孕っている……一方だけが悪いんじゃないわ」
「そうだとしても相手はゼメルザ公爵よ。たかが侍女に何ができるというの?」

なんという修羅場だろう、頭がクラクラする。
しばらくじっと二人の話に耳を傾けていると、ミシェルが今置かれている状況がおおよそ把握できた。

現在カルス・ゼメルザ、つまりジェニファーの祖父とミシェルは婚約中。
でもカルスは放蕩者でかなり女癖が悪く、このたびミシェルの侍女メリを孕ませてしまった、ということらしい。

でも二人の婚姻はもともと政略上のものなので婚約が解消されることはなく、メリの処遇についても現在検討中のようだ。
先程ミシェルが当主に呼ばれたのは、恐らくこの件の話し合いのため。
去り際のミシェルの悲しげな顔を思い出して、ジェニファーの中で言い知れぬ怒りが込み上げた。

(結婚を前にこんな目に遭わされていただなんて……お祖母様、どれほどお辛かったことか……)
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