不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
「あっ……!」

ラインハルトは素早く腕を掴んで引き寄せると、ジェニファーの唇を荒々しく奪う。

「んっ……むぅ……っ」

驚いて離れようとするけれど、後頭部を押さえつけられてますます口づけが深くなる。

(なに……怒って、る?)

意図がわからず困惑しつつも、ジェニファーはラインハルトの首に腕を回し、口づけを受け入れた。

「ジェニー……」

吐息混じりに囁かれる声音は艶を孕んで、口付けは徐々に甘く淫らなものに変わっていく。
普段冷静なラインハルトが、熱い感情を滾らせジェニファーを見下ろす。
きっと誰も知らない、ジェニファーだけが知るラインハルトの顔。

自身の潤んだ瞳が甘く蕩けていくのを感じる。
偽りとか演技とか、そんなことはどうでも良くなるくらい、ただ目の前の男の存在にギリギリと胸が締め付けられて仕方がない。

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