不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました

ジェニファーはそのまま力を抜いてラインハルトの上に折り重なった。

「ごめんなさい、急に太陽を見たせいか立ち眩んでしまいました……どこか痛くはありませんか？」
「ああ、この辺一帯は俺の昼寝スポットなんだ。芝が柔らかくて寝転がると気持ちがいい」

ラインハルトはごろりと寝転がると目を瞑ってジェニファーの髪を撫でた。
トクリトクリと規則正しい鼓動が耳を打つ。
ここに人目はなく、二人きりならば演技の必要もない。
そのことに気づきながらも、ジェニファーはすぐに離れようとはしなかった。
ラインハルトも何も言わずジェニファーの背に腕を回す。

「ライン、ここは本当に静かな場所ですね」
「ああ、落ち着くだろ？」
「ふふ、どうでしょう。静かすぎて世界にあなたと二人きりと錯覚してしまいそうです」
「俺と二人きりでは落ち着かないか？」