不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
「ライン……少し、私の話をしてもいいですか?」
「ああ、明日の朝まででも付き合うぞ」
「それは頼もしいですね」

くすくす笑いながらジェニファーはラインハルトの腕に頭を乗せた。

「私、早くに母を亡くして七歳まで祖母に育てられたんです。祖母が亡くなってからは伯母が面倒を見てくれたんですけど……伯母は私に複雑な感情を抱いていたようで、少し……私に対する教育は過激だったように思います」
「過激? 暴力でも受けていたのか?」
「暴力……かは分かりませんが、鞭で打たれたり、食事を抜かれたり、倉庫へ閉じ込められたり、容姿を貶められたりということは日常茶飯事でした」
「それが教育だなどいきすぎている……何故君にそんな仕打ちを?」
「私もずっと不思議だったんです。どうして伯母は私に対し憎しみのような感情を向けるのか――その糸口が過去を垣間見た時にやっと掴めたんです」

ラインハルトは言葉を挟むことはせず、ジェニファーの心を慰撫するよう髪を優しく撫で続ける。

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