不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
「ありがとうございます、ライン。でも最近は歳のせいか伯母も随分丸くなったんですよ。叱られることはあっても子供の頃のような体罰はなくなりましたしね。でも伯母はゼメルザの誇りが人一倍強く、恐らく誰よりもクレール家を忌み嫌っています。そんな伯母に刷り込まれて全部鵜呑みにしていたんですよ、私。馬鹿ですよね、何も真実なんて知らなかったくせに……」

知らなかったとはいえ、これまでラインハルトに悪感情をぶつけていた自分自身への自己嫌悪と羞恥でジェニファーは胸がいっぱいだった。

「ごめんなさい、ライン。あなたにはこれまでたくさん不快な思いをさせてしまいました……」
「謝罪は相手の目を見てするものじゃないのか」

揶揄うような声音に顔を上げ振り返ると、悪戯っ子のようなラインハルトの目とかち合った。

< 239 / 247 >

この作品をシェア

pagetop