不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
「ライン……怒ってないのですか?」
「怒る? 何を今更?」
「まあ、それもそうですね……」

ジェニファーは苦笑しつつ身体ごとラインハルトに向き直り、改めて頭を下げた。

「あなたに対するこれまでの不敬な言動、心からお詫びします」
「やめろ、ジェニー。俺だって君を怒らせるような酷いことを言ってきただろ」

ジェニファーの肩を掴んで起こすと、ラインハルトはそのままジェニファーを抱き締めた。

「正直腹が立つこともあったが、君を前にすると俺は冷静でいられなかった。他愛無いことと笑って流せばいいのに、君にはそれが出来なかった。君とやり合うのを、俺は心のどこかで楽しんでいたんだ。だから謝らなくていい」

ラインハルトの胸にしがみ付きながら、ジェニファーは信じられない思いに駆られていた。
ラインハルトが自分との口論を楽しんでいた?
やはり器の大きさが違うのかもしれないと、ジェニファーの顔に苦い笑みが浮かぶ。

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