不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました

ジェニファーの告白に、ラインハルトはあろうことかプッと吹き出した。
さすがにムッとしてジェニファーは頬を膨らませ抗議する。

「何故笑うのですか」
「いや、君は本当に負けず嫌いだな。いま言い争いをしていたつもりはないんだが」
「分からないならいいんです。そう私が勝手に感じただけですから」
「そうか、まあいい。いまは前向きに考えるとの言質をとれただけで充分だ」
「でも……昨日の敵が今日の友になるのはさすがに無理です。クレール家はずっと敵と教えられてきたんですから」
「ああ、そうだな」

ふっと苦く笑うラインハルトを見てジェニファーは思う。
ラインハルトの心はジェニファーにはないし、ジェニファーもまた然り。
それはいまも変わっていない。
でも――
昨日とは打って変わって、今のジェニファーはこの婚姻を前向きに捉えようとしている。
無から有に。それくらいジェニファーの心は激変した。
ほかならぬこの男の誠意ある言葉によって――