不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
その夜――自室で寛いでいたところ、ジェニファーは父からの呼び出しを受けた。
何を言われるか検討がついてはいても緊張で身構えてしまう。
深呼吸して一瞬躊躇ったのち、意を決して執務室の扉をノックした。
「入れ」
「お父様、言付けを受けて参りました」
「うむ。まあ座りなさい」
「はい……」
言われたとおり父の対面に腰を下ろす。
「既に姉から話は聞いているだろうが……お前の嫁ぎ先が決まった」
「クレール家、ですか」
父はゆっくりと頷いた。
「お前の相手となるラインハルト公子は中々の好青年だ」
馬で懐柔されただけじゃないのかしら、と口には出さず内心チクリと皮肉る。
「この週末神殿で婚約式を執り行う。あまり日がないが全て姉に任せてあるから問題はないはずだ」
「……はい」
青筋を立てながら侍女達を怒鳴り散らしているアンナの姿が目に浮かぶようだ。
生涯独身を公言するアンナは、早くに母を亡くしたジェニファー達の母親代わりだった。
ジェニファーのクレール家憎しはアンナから徹底的に刷り込まれたものだ。
しかし父はクレール家に対して比較的穏健だ。
同じ姉弟でありながらこの差はいったいなんなのだろう。
何を言われるか検討がついてはいても緊張で身構えてしまう。
深呼吸して一瞬躊躇ったのち、意を決して執務室の扉をノックした。
「入れ」
「お父様、言付けを受けて参りました」
「うむ。まあ座りなさい」
「はい……」
言われたとおり父の対面に腰を下ろす。
「既に姉から話は聞いているだろうが……お前の嫁ぎ先が決まった」
「クレール家、ですか」
父はゆっくりと頷いた。
「お前の相手となるラインハルト公子は中々の好青年だ」
馬で懐柔されただけじゃないのかしら、と口には出さず内心チクリと皮肉る。
「この週末神殿で婚約式を執り行う。あまり日がないが全て姉に任せてあるから問題はないはずだ」
「……はい」
青筋を立てながら侍女達を怒鳴り散らしているアンナの姿が目に浮かぶようだ。
生涯独身を公言するアンナは、早くに母を亡くしたジェニファー達の母親代わりだった。
ジェニファーのクレール家憎しはアンナから徹底的に刷り込まれたものだ。
しかし父はクレール家に対して比較的穏健だ。
同じ姉弟でありながらこの差はいったいなんなのだろう。