不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
二章 二人の使命
その後週末の婚約式まで、ジェニファーはラインハルトと顔を合わせることがなかった。
ジェニファー自身気持ちの整理をする時間が欲しかったし、正式に婚約式を取り交わすまで、これまでどおり不必要な接触を控えようと話し合って決めたからだ。

それから週末までの数日は平穏な日々を過ごしていた。
そうして普段通りの日常を過ごすうち、ジェニファーは個人のちっぽけな感情に囚われてはいけない、と考えを改めるようになっていった。
この婚姻は自分に課せられた試練であり使命なのかもしれない。
それを本当の意味で乗り越え果たすためにも、父が仄めかした確執の裏側にある真実に、いつかきっと向き合わなければいけない――そんな気がする。
本音を言えば、ジェニファーだって物語のような愛や恋に憧れはある。
でも、自分には縁のないものだった。そんなことよりもっと為すべき大事なことが自分にはある――
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