不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
まさかの讃辞に呆気に取られるジェニファーをよそに、ラインハルトは胸ポケットからなにかを取り出しながらジェニファーの背後に回った。

「今日君は来ないかもしれないと思った」
「私は……逃げたりなどしません」
「ああ、それでこそジェニファー・ゼメルザだ」

背後でくすりと笑う気配と共に、ジェニファーの胸元にブルーサファイアの豪奢なネックレスがあてられた。
石はかなりの大粒で、相当高価なものだと素人目にも分かる。
しかもその色はラインハルトの瞳の色――

「やっぱり、君に良く似合うな」

結いあげて露出した項にラインハルトの指先が触れ、ジェニファーはビクリと身を強張らせた。
ラインハルトは特に気にした風もなく、そのままカチリと留め具のハマる音がした。

「これ……」
「君への贈り物だ。気に入ってくれるといいんだが」
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