不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
「あら! あらあらあら!」

アンナは小走りににじり寄ってきて、ネックレスをジロジロと無遠慮に凝視する。
そしてぱあっと瞳を輝かせた。

「素晴らしいわ……! ジェニファーあなた大事にされているのね! こんな素晴らしい高価なものを!」
「え、ええ? まあ……」
「私は先に聖堂へ行っているから、打ち合わせが済んだら二人もすぐにいらっしゃいね」

スキップでもしそうな勢いでアンナはウキウキと控え室から出て行った。
その後ろ姿を何とも言えない気持ちで見送りながら、ジェニファーはそっと溜め息をついた。

「騒がしい伯母でごめんなさい……」
「いや、初対面から嫌われなかったようで安心した」

嫌うどころかあれは完全に気に入っている。
父以上に頑なだった伯母をこれほどいとも容易く篭絡するとは。

(私、とんでもない男の手を取ったんじゃないかしら……)
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