不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
「ふふ、私真に受けちゃいますよ?」
「もちろん、可愛い妹が増えて僕としては嬉しい限りだ」

明るく和んだ空気の中、にっこりと微笑み合ってジェニファーは少し氷の溶けたジュースを口に含む。
ベリー系の果実のようで、口内に広がる甘酸っぱい酸味に思わず顔を顰めた。

「ちょっと酸っぱいねこれ」
「ええ、でも後味が甘くて美味しいです」
「たしかに後味が甘いの不思議だねえ」
「本当ですね」

たわいない会話にすら感じられるケビンの心遣いがジェニファーにはとても心地よかった。
きっとケビンの伴侶となる人は、こんなふうに温かく幸せな日々を過ごすことになるのだろう。
ジェニファーはまだ見ぬケビンの未来の妻を少しだけ羨ましく思った。
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