不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
あまり遅くなってはいけないと、ケビンは夕刻前に屋敷までジェニファーを送り届けてくれた。
楽しい時間はあっという間だとジェニファーは名残惜しく思った。

「今日はとても楽しかったです」
「僕も楽しかったよジェニファー。あの怖そうな婚約者に内緒でまたデートしようね」

悪戯っぽくウィンクするケビンについ笑みが零れる。

「あの時、本当にケビン様がいてくださってよかったです」
「ジェニファー、君も恋人を作れば良い。そうすれば悲しい思いをする必要もないよ」
「そんな……恋人なんて……」
「僕が立候補しようかな。不満なら本命ができるまでの仮でも良いよ」
「不満とかそういう問題では……ケビン様、揶揄ってるんですね」
「いいや、僕は大真面目だよ。少しは公子をヤキモキさせてやればいい」

そこでジェニファーは首を捻る。
もし自分に恋人がいたとして、あのラインハルトがやきもきなんてするだろうか……まったく想像がつかない。
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