不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
三章 偽りの恋人
その夜、ケビンのお陰でだいぶ気持ちが和らいではいたものの、ラインハルトとカヤの姿を思い出してはモヤモヤして中々寝付けなかった。
それでも律儀に朝はやってくるもので、寝不足の重い体を引きずりながら玄関扉を開いたところでジェニファーの動きが止まる。

(これは――いつかのデジャヴ?)

「おはようジェニファー、迎えに来た」

朝日を浴びて煌めく金髪に思わず目を細める。

「ラインハルト……」

差し出された手を取ると、ラインハルトは自身の馬車までジェニファーをエスコートして、いつかのように向かい合わせに座らせた。
そして改めてラインハルトの姿を見て、ジェニファーはおや、と首を傾げる。

「ラインハルト、制服ではないのですね。学園には行かないのですか?」
「ああ、悪いが君にも今日は休んでもらう」
「何故ですか?」
「話がしたいからだ」

昨日のカヤとの件だろうか……ここで改めて恋人宣言をされても気分が悪いなと、ジェニファーの表情があからさまに曇る。
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