不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました

「……カヤさんにあなたを諦めさせるには、あなたに愛する人が必要だと思います」
「ああ、だがそんなすぐには……」
「ええ、なのでその……互いにものすごく不本意な提案であることは承知の上なんですが……」
「なんだ？」
「カヤさんの気持ちに整理がつくまで、私と……恋人のフリをするのはどうでしょう」

そこでラインハルトがゆっくりと身を起こしてジェニファーの顔を見た。
射るような眼差しが、真意を問うようにジェニファーに注がれる。

「本気か？」
「ええ」
「君にこの俺と恋人のフリなどできるのか」

そう切り込まれてジェニファーは考える。
恋人のフリだから当然ラインハルトを好きだと周囲に思わせる演技力が必要になるが、果たして自分にそんな真似ができるのだろうか。