不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
「……考えすぎだわ、テオ。好きになった人がたまたま婚約者だっただけ。これ以上のことってないでしょう?」
「姉さん、あなたと何年姉弟やってると思ってるんです? あなたの嘘くらい簡単に見抜けますよ」

心ごと見透かすような冷めた視線がジェニファーを貫く。
もう無理だ。
元来嘘の苦手なジェニファーがテオドールに隠し事なんてできるはずがないのだ。

「……わかった、私の負けよテオ。あなたの読みどおり私達は事情があって演技をしている」
「話せる範囲で構いません、何が狙いです?」
「ラインハルトに思いを寄せ、全力で依存している女性がいるの。彼の望みは彼女に諦めてもらい、別の幸せを見つけてもらうこと。そのために私達は恋人のフリをしているのよ」

ふむ、とテオドールは何事かを考え込む。

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