不本意ながら犬猿の婚約者と偽りの恋人を演じることになりました
四章 ラインハルトの過去
今日はラインハルトとの約束の日。
いよいよ彼の祖父と対面をすることになっている。
誰よりもゼメルザ家を憎んだ人だ、いったいどんな心境の変化からジェニファーと会う気になったのだろう。
ジェニファーは祖母――ミシェル・ゼメルザの若い頃に似ているとよく言われる。
造作もさることながら、燃えるような赤毛はまごうことなき祖母譲りだ。
祖母を知っているらしい彼はジェニファーを見てどんな感情を見せるだろうか。
宝石箱を開き、ジェニファーは祖母から譲り受けたネックレスを慎重な手つきで取り出す。
「今日はこれを着けていくわ」
ジェニファーの髪を整えていたミリーが感嘆の声をあげる。
「まあ……! エメラルドが一際美しいですね」
「ええ、祖父から祖母への贈り物だと聞いているわ」
「あ、この鎖! とても繊細な技術で、熟練の職人でも一連を作るのに半年はかかると聞いたことがあります」
「そんなに……知らなかったわ」
愛する人に最高のものを――そんな祖父の思いが込められている気がして、ジェニファーは目を細めながら指先で鎖をなぞる。
いよいよ彼の祖父と対面をすることになっている。
誰よりもゼメルザ家を憎んだ人だ、いったいどんな心境の変化からジェニファーと会う気になったのだろう。
ジェニファーは祖母――ミシェル・ゼメルザの若い頃に似ているとよく言われる。
造作もさることながら、燃えるような赤毛はまごうことなき祖母譲りだ。
祖母を知っているらしい彼はジェニファーを見てどんな感情を見せるだろうか。
宝石箱を開き、ジェニファーは祖母から譲り受けたネックレスを慎重な手つきで取り出す。
「今日はこれを着けていくわ」
ジェニファーの髪を整えていたミリーが感嘆の声をあげる。
「まあ……! エメラルドが一際美しいですね」
「ええ、祖父から祖母への贈り物だと聞いているわ」
「あ、この鎖! とても繊細な技術で、熟練の職人でも一連を作るのに半年はかかると聞いたことがあります」
「そんなに……知らなかったわ」
愛する人に最高のものを――そんな祖父の思いが込められている気がして、ジェニファーは目を細めながら指先で鎖をなぞる。