キャンバスと五線譜

転校生

その日は、日曜日だった。

朝から引越しの荷物を運ぶ音で、僕は目が覚めた

おそらく、今日新しくこの家に来るヤツの荷物だろう。

父はまた、新しく子犬を飼ったらしい。


僕の父親は、日本でも名の知れた人だった。

日本全国から才能のある若者を集め、自分が学長を勤める“優美学園”に入学させる。

そして、その若者を優秀な芸術家に育てようという魂胆。

音楽や画家、彫刻家、そう言った作品を作る人達は、才能があっても、経済的に恵まれていないから、父が支援してやろうと言う事らしい。


そういう僕も、優美学園に通っているのだが、僕は何のとりえもなく、学長の息子という肩書きと、天才ピアニストである母親の特訓のおかげで、かろうじているようなものだった。

自分の置かれている環境に嫌気がさし、ため息をつきながら寝返りをうった時だ。

窓の外から、荷物を運ぶ業者の声がうるさく響いた。
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